睡眠不足とアルツハイマー型認知症
最近は仕事が忙しく、睡眠時間があまりとれていません。家族からしっかり睡眠時間をとらないと認知症になると言われました。睡眠不足と認知症は関係があるのでしょうか。(40代・男性)
高齢者に見られる「物忘れ」は、食事で食べた物を忘れることがありますが、脳の神経細胞が本来の老化よりも早く減り、40~50代くらいから進行するアルツハイマー型認知症では食事したこと自体を忘れます。「行ったこと」「約束したこと」など、行動そのものを忘れ、生活に支障を来します。やがて時間や場所、人も分からなくなり、夜間に騒いだり、家の中で迷いトイレにも行けなくなります。
脳の活動によって生じる老廃物の「アミロイドβ」は、蓄積すると脳細胞を圧迫や死滅させます。脳の神経が正常に機能せずアルツハイマー型認知症になります。脳は昼間に得た情報を睡眠によって整理します。また、脳が活動して発生した老廃物のアミロイドβは、睡眠中に脳内から盛んに排出されます。睡眠の時間も質も十分でないとアミロイドβの蓄積は早く進み、認知症にもなりやすいといえます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針」(2014年)では、睡眠時間の目安は25歳では7時間、45歳では6・5時間、65歳では6時間。加齢と共に睡眠時間は減少し、さらに朝早く目覚めますが、睡眠時間はきちんと確保したいものです。アルツハイマー型認知症の発症には遺伝も関係しますが、糖尿病や高血圧など生活習慣病の人、頭部外傷の既往歴のある人は、発症する危険が高いといわれています。脳の血管が傷むと、アミロイドβを排出する機能が低下して、脳内に蓄積しやすいのです。
アルツハイマー型認知症の予防には、摂取カロリーが多過ぎないバランスの良い食生活、適度に体を動かすことが大切です。運動や農作業で体を動かすことが多ければ、夜間には眠りが深くなり脳内でのアミロイドβの蓄積を進ませないことにもなります。認知症と睡眠は深い関係があるのです。
健康科学アドバイザー●福田千晶