過敏性腸症候群
お腹の調子が悪いことが多く、症状も良くなったり、悪くなったりを繰り返し、トイレに行くと症状が和らぎます。何か病気の疑いがあるのでしょうか。(40代・男性)
過敏性腸症候群は、腸に炎症や腫瘍がないにも関わらず、慢性的にお腹の調子が悪くなってしまう病気です。お腹の痛みや便の異常(便の回数や硬さがおかしい)などが良くなったり悪くなったりするというのが典型的な症状で、排便によって症状が和らぐという特徴があります。残念ながら原因は分かっていませんが、ストレスと関連があるのではないかといわれています。
検査で他の病気がないことを確認
過敏性腸症候群を疑った場合、他の病気がないことを確認する必要があります。腸の炎症や腫瘍だけでなく、甲状腺機能障害や糖尿病性神経障害など腸以外の病気でも同じような症状がでる場合があるからです。
まず血液検査や便検査を行って、異常があった場合に腹部超音波やCT、大腸カメラなどの検査を行う場合が多いです。また、血便、発熱、体重減少といった症状や、身体診察で異常がある場合は、積極的に検査を行います。50歳以上の方や過去に腸の病気にかかったことがある方、家族に腸の病気の方がいる場合も積極的に検査を行います。
過敏性腸症候群の診断には、国際的に用いられている「ローマⅢ基準」(後述)を用います。基準を満たし、かつ必要と思われる検査で異常を認めなかった場合に、過敏性腸症候群と診断して治療を開始します。
生活習慣の改善が重要
まずは食事を規則的に摂って暴飲暴食を避け、睡眠をしっかりとるなど、生活習慣の改善が重要です。刺激の強い食事やアルコールは控えるようにします。明らかなストレスがある場合は、そのストレスが解消できれば、症状も改善する場合が多いです。
生活習慣の改善を試みても症状が改善しない場合は、薬による治療を行います。症状に応じて、腸の動きを整える薬や便の硬さを調整する薬などを用います。
過敏性腸症候群の診断基準「ローマⅢ基準」とは
最近3カ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、次の3項目中2項目以上の特徴を示します。
1. 排便によって症状が和らぐ
2. 症状とともに排便の回数が変わる
3. 症状によって便の形状(外観)が変わる
(2019.01)
佐久総合病院 総合診療科 鄭 真徳先生