ドクターヘリ
全国各地で活躍しているドクターヘリですが、どのような状況で出動するのでしょうか。また、機内ではどのような処置ができるか教えてください。(40代・男性)
平成17年7月から運行開始
ドクターヘリとは、重症患者のもとへ一刻も早く医師・看護師を派遣し、病院に運ぶまでの間に必要な救命処置を行うためのさまざまな器械や薬などを搭載している専用ヘリコプターのことです。ヨーロッパでは30年以上も前から救急ヘリが活躍し、大勢の方の命が救われてきました。
日本の空には、約8年前からドクターヘリが飛んでいます。救命率の向上と障害や後遺症の軽減、そして病院から遠く離れた場所の急病人やけが人を救うのが目的です。長野県のドクターヘリ導入は、平成10年から当病院屋上のヘリポートで消防防災ヘリコプターによる重症患者を受け入れてきた実績などが評価され、佐久総合病院が基地病院に選ばれました。そして平成17年7月1日、全国では10番目となる信州ドクターヘリが運航を開始しました。
昨年度出動回数は351件
ドクターヘリは救急車と違い一個人では呼べません。消防本部や救急隊、病院や診療所からの連絡で出動します。出動するのは、事故や転落などによる大けがや大火傷、中毒、また脳卒中や心臓病、呼吸不全や緊急手術が必要な重い病気の場合です。そのほか、大きな病院まで救急車では長時間かかる場合や重症患者の病院間の転院も請け負います。ただし、天候が悪い場合や夜間は安全に飛行できないため出動しません。ドクターヘリの飛行費用ですが患者の負担はなく、救急車同様に税金で賄われます。
信州ドクターヘリは長野県全域に出動します。着陸するのは学校の校庭や公園など、あらかじめ県内各所に約500カ所設定してある臨時へリポートがほとんどです。そのほかにも、救急現場近くに安全に着陸できる空き地や道路などがある場合は、救急隊の誘導で着陸することもあります。昨年度は351件出動。年々出動件数は増加し、その効果も現れてきました。
ドクターヘリ運用へのご理解とご協力を
ドクターヘリの医師・看護師は救急隊と協力して、現場で患者の救命処置に当たります。点滴や酸素投与、各種薬剤の投与、超音波検査などのほか、必要ならば喉に管を挿入し空気の通り道を確保する気管挿管という処置を行うこともあります。飛行中は心電図をモニターし、血圧や呼吸の状態を観察しながら病院まで搬送します。
ドクターヘリの飛行にともなう騒音などで、病院近くや着陸地点近くの方々にご迷惑をお掛けしています。ドクターヘリの向かう先の尊い命を救うため、我々もこれまで以上に努力してまいりますので、引き続き皆様のご理解とご協力をお願いします。
佐久総合病院 救命救急センター医長 佐藤 栄一先生