多汗症
手のひらや脇などに汗・・・多汗症では?
幼い頃から手のひらや脇などに汗が多く出ていました。あまり気にしていなかったのですが、同僚から「多汗症ではないか」と言われ、受診をすすめられました。多汗症とはどんな病気か教えてください。(20代・男性)
程度によっては日常生活の大きな悩みにも
「多汗症」は手掌や足底、腋窩に発作的に大量の汗が出る病的状態です。この発汗は温度の影響も受けますが、主に精神性発汗であり、わずかな精神的緊張でも大量の汗が出ます。軽症の場合、患部が湿ってベタベタしているため不快に感じる程度ですが、握ったものや下着が常に濡れてしまう状態(中等症)、汗がしたたり落ちるような重症の場合もあります。その頻度と重症度によっては、患者さんにとって日常生活や社会生活を送る上で大きな悩みとなっています。
主な治療とその特徴
主な治療としては、次の4つが挙げられます。
- 塩化アルミニウム液の外用汗腺(汗をつくる所)や汗管(汗の通り道)に直接作用して汗を抑えます。精神性発汗の起こらない就寝前に塗ると効果的です。
- イオントフォレーシス多汗部位を水道水に浸けて電流を流す方法です。電気分解により生じた水素イオンが汗腺に作用して汗を抑えます。通常は1回30分間、毎日あるいは1日おきに十分な効果が得られるまで数週間、初期治療を行い、それ以降は週1回の維持療法を続けます。
- ボツリヌス毒素の局所注射ボツリヌス毒素は、汗腺を支配している神経のアセチルコリン放出を抑制することで発汗を抑えます。主に腋窩多汗症で行いますが、手掌多汗症でも行われています。それぞれ数10カ所にボツリヌス毒素を注射しますが、手掌の場合は注射時の痛みが強く、筋力低下が生じる場合があります。有効性は高く、約3カ月から1年程度効果が持続しますが、保険適応がなく非常に高価です。
- 内視鏡的胸部交感神経切除術手掌や腋窩の汗腺を支配している交感神経を切除することにより、手掌や腋窩、顔面の汗も抑えます。術後には手掌から顔面まで全体の汗が著減するため、それを補うように腹部や背中、大腿などの発汗が増えます(代償性発汗)。その程度は個人差が大きく、代償性発汗の量が多い場合には日常的に不快となる場合もあります。
軽症の場合はまず1.や2.を試し、それでも十分な効果が得られない場合や重症の場合は、さらに有効性の高い3.や4.を検討します。病院によって受けられる治療が限られるため、事前に問い合わせてからの受診をおすすめします。
小諸厚生総合病院 皮膚科 吉澤さえ子先生