物忘れ・度忘れ
40代になり、人の名前や漢字が思い出せないことがよくあります。何かの拍子に思い出せることがあります。この「物忘れ」は「アルツハイマー」(または認知症)の始まりではないのでしょうか?
多くは生理的な理由で起こる
どなたでも年をとると、物忘れをしたり人の名前や品物の名称などが「わかってはいてもなかなか思い出せない」ということが起こります。これらの物忘れや度忘れの多くは、生理的な理由で起こるごく当たり前(正常)なものです。物忘れはお年寄りだけに起こるわけではなく、頻度は少ないのですが若い人たちにも起こります。
正常の物忘れの特徴
正常の物忘れと痴呆の始まりとを区別するのはなかなか難しいのですが、ここでは三つほどポイントをあげて正常の物忘れの特徴について説明します。
第一点は、物忘れしても後で思い出すことが多いのです。物忘れをした直後に一生懸命思い出そうとしても思い出せないのに、別のことを考えたり行っているときにふと思い出すことがよくあります。
第二点は、物忘れをしてもその程度が進行せず日常生活に支障をきたすまでには至らないことです。痴呆による物忘れは、その度合いや内容がだんだんひどくなる(進行する)のに対して、正常な老化による物忘れは、頻度は増してもそれ以上には進行しません。「進行する」とは、たとえば簡単な計算ができなくなったり、字を読んだり書いたりする能力が落ちたり、時計を読めなかったり、日時や場所がわからなくなったり、簡単なことでも判断ができなくなることです。
第三点は、物忘れしても「私が忘れていたのだ」と自分の物忘れや障害に気づき自覚していることです。
痴呆の始まりではない
頻回に物忘れをする場合でもこの三点を満たしていれば、それは健常な物忘れで現在のところ痴呆の始まりではないと思われます。今回ご質問をいただいた方は、後で何かの拍子に思い出しており、質問を投稿していただくなど社会的活動は保たれており、物忘れを自覚していることからまず痴呆(アルツハイマー病)の始まりとは考えにくいと思います。
佐久総合病院 大西 直樹先生(精神神経科部長)