鳥インフルエンザ
「鳥インフルエンザ」とは、どんな病気なのでしょうか。その特徴と対策について教えてください。
ウイルスと宿主の関係
鳥に感染するインフルエンザウイルスのうち、人に感染した数は2003年から2006年3月はじめにかけて、世界で175人の報告があり(国立感染症研究所・感染症情報センター)、うち96人が死亡したという極めて毒性の高いウイルスが現在いわれている鳥インフルエンザです。しかも、その問題となっているH5N1型インフルエンザは、鳥のみに感染しますが鳥にとっても毒性が高いのです。ではなぜ、インフルエンザウイルスにはヒトに感染するもの、鳥だけに感染するものがあるのでしょうか。そもそもウイルスは地球上で最も原始的な生命体で、より高度な他の生命体の中に寄生しなければ自分の子孫を複製できない原始的な生命体です。この披寄生生命体を宿主と呼び、ウイルスによって宿主が決まっており、どの生命体にでも寄生できるわけではありません。インフルエンザウイルスも宿主がヒト、鳥あるいは豚のものがあり、お互いにその領域を超えることはありません。現存するインフルエンザウイルスにはヒト―豚、豚―鳥と、宿主が複数持つものはあっても宿主がヒト―鳥のウイルスは存在しないのが通説でした。
ウイルスの突然変異
ところが、2003年にヒト―鳥に宿主を持つ新しいインフルエンザ=鳥インフルエンザの存在が確認され、しかも毒性が極めて高いものであるため現在問題となっています。こうした新型のインフルエンザウイルスは、ヒトおよび鳥の共通宿主である豚の中で突然変異として生まれるのであろうと推測され、ヒト―豚―鳥が密接に共生する地域で出現したものと考えられています。幸いなことにこの鳥インフルエンザウイルスは、今のところヒトからヒトへ感染しないウイルスであると確認されています。しかし、突然変異が起こり、ヒトからヒトに感染能力のある鳥インフルエンザが出現すれば、たちまち全世界に広がってしまうのは確実視されています。
ワクチンの早期開発
いまや欧州にも拡大しているH5N1型インフルエンザは、全てヒトへの感染能力は無いものですが、その中にヒトへの感染能力を持ち、かつヒトからヒトの感染能力があるものが絶対に潜んでいないとは断定できません。さらに、いつでも生まれる可能性は高いと推測されていますが、残念ながら出現を阻止する方策は現時点ではありません。
ひとたび発生すれば確実な感染予防方法は無く、治療薬としてのタミフルの効果は未知数です。ワクチンの開発も、ヒトからヒトへ感染する鳥インフルエンザウイルスが出現・確認されていないために製品化されていません。ウイルスが確保されてから一分一秒でも早く短時間のうちに、ワクチンを製品化する技術の開発が、現在最も有効な手段といえます。
小諸厚生総合病院小児科部長 小林 真二先生