てんかん発作
以前、あるテレビアニメを見ていた子供たちが体調不良を訴えたり、けいれんを起こしたというニュースがありました。具体的にはどんな症状なのですか。日常の生活で気を付けることはありますか。
視覚刺激により誘発
ご質問の内容からすると、おそらく1997年12月に起きた件だと思います。同じテレビアニメを見ていた日本各地の数百人の子供が、発作を起こしたという出来事がありました。発作の約半数は、全般性の強直間代性発作というてんかん発作で、残りの半数は悪心、嘔吐、めまいなどの症状を起こしました。
この1件は大きな社会問題となり、発症の原因、てんかんとの関連について検討され、また発作を起こした子供の追跡調査も行われました。当初は様々な意見が出ましたが、当時の厚生省特別研究班は、視覚刺激により誘発されたてんかん発作と結論。放送されたテレビアニメの12ヘルツの赤・青点滅刺激が大脳を広範囲に興奮させて起きたと推定されました。特に小児は、このような光刺激に反応しやすい傾向を持っています。これは、視覚誘発電位や機能的MRIなど特殊な検査でも確認されています。愛知県での調査では4900人に1人の頻度で起きたことが分かりました。
「てんかん発作」と「てんかん」の違い
ここで「てんかん発作」と「てんかん」との違いについて簡単に説明しておきます。
「てんかん発作」は症状を指す言葉で、大脳皮質が突発的に興奮することによって生じます。幼児に起こる熱性けいれんも「てんかん発作」と考えられます。これに対して「てんかん」は、発熱などの明らかな誘因がなく慢性的に繰り返す病気を指します。ですから1997年12月の件も、1回では「てんかん」とはいえないことになります。
光刺激に感受性が高い小児は注意
当時、発作を起こした子供の75%は初めての発作でした。さらに5年間の追跡調査でも、その内の19%が再発しただけでした。つまりその時発作が起きなければ、一生涯発作を起こさなかった子供が多かったことを意味します。また、再発作のタイプや再発作までの期間を詳しく調べた結果、当時のテレビアニメを見て起こした発作自体は、てんかんを引き起こすものではないといわれています。
ただし、光刺激に感受性が高い小児は、強い刺激を発する映像を見る際、部屋を明るくして見るなどの注意が必要です。また、それ以上に放映する側にも充分な配慮が求められています。
小諸厚生総合病院 脳神経外科医長 黒柳 隆之先生