口臭
最近、口臭が気になりだしました。歯磨きは気をつけてしているつもりですが、原因は何でしょうか?また、治療法があれば教えてください。
口臭の原因
口臭を自覚されて歯磨きもがんばって行われているようですが、その臭いを他人が認め不快に感じるようであれば、さらに原因を追求し対応する必要があります。
吸気に臭いを生じる場合、その原因のほとんどは口の中にあります。鼻、消火器、呼吸器の病気、臭いのきつい食べ物、アルコール、タバコなど口腔以外が原因の場合もありますので、鼻から出した吸気に臭いがあるかを確認するのも手がかりとなります。
口腔からの臭いは、口の中に常に存在する細菌(口腔常在菌)が、タンパク質を分解して揮発性硫化化合物(メチルメルカプタン等)を産生することにより発生すると考えられています。元となるタンパク質は、粘膜の剥離上皮、細菌、白血球、食べ物など口腔に豊富に存在します。また、口腔常在菌は、健康な状態でも何億個も存在しています。元となる物質が口腔には常にそろっていますので、起床直後や長時間の緊張やストレス、疲労時には自律神経により唾液の分泌が抑制され、細菌数が増加することで一時的な軽度の口臭は誰にでも発生します。このような臭いを生理的口臭といい、治療の必要はありません。
プラークを減らして口腔を良い環境に
問題なのは病的な口臭です。虫歯や歯周病で腫れた歯肉から嫌気性菌(酸素を嫌う菌)が作用して、腐敗臭や卵が腐ったような嫌な臭いを出します。歯肉充血には、出血による血液の臭いも合わさります。脱水、糖尿病、唾液腺の問題、薬の副作用、ストレス、口呼吸、加齢などにより唾液が極端に減少し、口が渇く場合にも臭いがきつくなります。舌にも舌苔という症状があり、これも歯垢と同じく悪臭を放ちます。口臭治療先進国の米国では、舌の奥に生息する細菌が最も揮発性硫化化合物を産生するとして清掃の主対象にされています。口腔は乾くほど臭いを強く出すようになります。治療の基本は、自分自身で行うブラッシングと歯科医院で行う機械的清掃でプラーク(細菌塊)を減らして口腔を良い環境に維持することです。
口臭は、吐く息を自分で嗅いでみても判らないので、清潔好きでエチケットを大事にする人ほど、口臭に対する他人の反応を人一倍敏感に受け止める傾向にあります。実際には口臭が無いにもかかわらず不安になり、過度に口臭を気にする場合を自己臭症(自律神経症)といいます。潔癖症な人に多く心身医学的治療が必要な場合もあります。まず本当に気にする臭いがあるか確認することが重要です。自分では確認することが難しいので、家族など遠慮のいらない方に確認してもらうか、歯科医に相談ください。
佐久総合病院 歯科口腔外科医長 清水 一先生