肩周辺の痛み
近頃、肩を上げようとすると痛みを感じます。友人から「四十肩ではないか」と言われますが、これ以上ひどくならないか心配です。(40代・男性)
肩周辺の痛み、肩こりなどは日常診療で大変訴える患者の数が多い疾患です。肩こり・肩関節付近の痛みについて、今回は医師自体がどのように肩周辺の痛みをみているかをお話しします。
まず痛みをみたときに、1.「本当に整形外科疾患か」2.「肩が原因で痛みが出現しているのか」3.「首の神経からきた痛みではないのか」といったように鑑別していきます。
整形外科疾患ではない痛み
まず1.ですが、例えば心筋梗塞、大動脈瘤解離といった循環器疾患、気胸などでも背部、肩付近の痛みが出現する可能性があります。救急疾患を非救急疾患と鑑別することが重要になります。肩や首を動かして、痛みが悪化したり改善したりする場合は、2.や3.であろうと判断することが多いです。
肩を原因とする痛み
2.の肩が原因で肩の痛みが出現する疾患としては、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)が最も頻度が多いといわれています。肩関節包の炎症が主体であり、最初は痛みが強く、そのうち激しい痛みがひいてくると、今度は拘縮(関節が固くなって動かなくなること)が出現してきます。激しい痛みが出現している間は、痛み止めなどを使用して炎症の改善を行い、痛みが引いてきたら拘縮予防のために関節可動域訓練を行います。有名なのが、おもりをもって前後に振るように行う、振り子運動です。
しかし、肩周辺の疾患としてはほかに化膿性肩関節炎、腱板断裂、上腕二頭筋長頭炎、関節唇損傷などがあり、これらを鑑別して初めて肩関節周囲炎の診断となるわけです。そのため、上記を鑑別するためにMRI撮影を行うことも多くなっています。
首の神経からの痛み
3.の場合は、まず、頚椎の椎間板が変性してくると、肩の後側、肩甲骨の内側に痛みが出現することが多いといわれています。また、頚椎の変性から頚椎内で神経の圧迫が起きて肩から手に痛みが出現することがあります。比較的少ない疾患ですが、頚椎後縦靱帯骨化症という頚椎内の靭帯が骨になってしまう疾患では肩こりが多いといわれています。
このように肩周囲の痛みでも、多くの疾患がかかわってきます。安易に判断せず、痛みが長期化した場合は整形外科専門医の診察を受けてください。(2015.05)
佐久総合病院 佐久医療センター 整形外科統括部長 福島 和之先生