麻疹(はしか)
最近、ニュースなどで報じられている麻疹の大流行ですが、幼い頃麻疹にかかっていないので心配です。今回の大流行の原因は何でしょうか。麻疹の症状と合わせて、感染を防ぐ具体的な方法などを教えてください。
麻疹抗体保有率の減少
今回の麻疹流行の原因は、13~30歳の年齢の人たちの麻疹抗体保有率が80%以下と少ないために起きたものと考えられます。特に毒性の強い新型ウイルスが出現したわけではありません。麻疹もインフルエンザなどの流行性ウイルス感染症と同じように毎年同じ季節に流行します。一般に流行と人間の抗体保有率の間には密接な関係があり、保有率80%以下の集団では、集団発生の可能性が特別高くなります。
それではなぜ、そのほとんどが幼少時に麻疹ワクチン接種を受けているにもかかわらず麻疹抗体保有率が低いかというと、次の2つの理由が挙げられます。まず1つは、ワクチン接種率が高くなったことで日本では麻疹感染発症数が激減し、感染者と接することがなくなったため。2つめは、麻疹ワクチン接種が単回であったためです。
ワクチンの恩恵が逆効果に
単回接種では、年齢とともに抗体価が急速に低下しますが、再接種するか麻疹患者と接することで、一生涯抗体を保持できるようになります。ワクチンの恩恵によって、日本では麻疹に自然感染する人が激減しました。この6、7年の間に麻疹の自然発生数は皆無となりましたが、皮肉にもこの恩恵が逆に抗体保有率の低い上記の年齢層の若者に感染を広げてしまったのです。
強い感染力で爆発的に広がる可能性
麻疹は肺結核のように空気感染で広がり、そのうえ極めて強い感染力があります。同じ部屋の空気を吸うだけで感染するほどです。症状は4~5日続く高熱と激しい咳、その後に体に紅班が出現。その後も3~5日熱が続きます。重症度は小児より成人の方が高く、妊娠女性では胎児にも悪い影響を及ぼします。また、発症初期は診断がつきにくく、紅班か口腔内の白い斑点が出現して初めて判明するので、それまでの期間に周囲に爆発的に感染させてしまいます。感染予防は、ワクチン複数回接種です。接してしまった人には発症や重症化予防として、早期にワクチン接種か抗体を投与することもあります。
診察に関しては、患者数の激減のため麻疹診療を経験したことが無い若い医師も多いため、可能なら40歳代以上の小児科専門医師に診察していただくのを薦めます。
小諸厚生総合病院 小児科部長 小林 真二先生