心筋梗塞
「寒い季節は心筋梗塞などに注意が必要」とよく聞きますが、なぜでしょうか?その原因と、予防するために日常の生活で気をつける点があれば教えてください。(40代・男性)
心筋梗塞の2つの大きな原因
心筋梗塞の原因は、大きく2種類に分けられます。1つは、冠動脈危険因子と知られる事柄です。生活習慣病(高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満)や喫煙、加齢、家族歴などがこのはんちゅうに入ります。それに対して2つめは、外的誘因といえるかもしれません。過労や激しい運動、精神的ストレスなどがその代表格でしょう。今回のご相談にもあります「寒さ」もこの外的誘因の1つと考えられます。
寒さと発症の関係
では、寒くなるとなぜ心筋梗塞が増えるのでしょうか。現在のところはまだその理由がはっきり分かっていませんが、いくつか推測されていることはあります。まずは、冠動脈危険因子により心臓に血液を送る血管である冠動脈に動脈硬化現象が生じることから始まります。このため冠動脈壁の中には脂肪物質がたまって厚くなり、「おかゆ」のような状態になる粥腫と呼ばれるものができます。そこに自律神経の中でも身体を緊張させる役割の交感神経が寒冷刺激により活性化され、冠動脈の血管抵抗が上昇したり、また血管自体のけいれん(れん縮)を誘発することによって、冠動脈壁にある粥腫が破裂し、そこで血栓形成を起こし、冠動脈が閉塞してしまうために心筋梗塞を発症するものと考えられています。
寒暖差の大きな場所での注意
では、心筋梗塞を予防するためにはどうすればよいのでしょうか。基本は、何といっても冠動脈危険因子を取り除く努力をすることです。動脈硬化が強くなれば、いくら外的要因を遠ざけてもいつかは破綻を来します。その上で、寒い日(大よそ一日の平均気温が6℃未満になった時)には外出は控えたり、やむを得ず外出する時は防寒対策をしっかり整えることが肝心です。また、ヒートショックにも注意が必要です。これは、急激な温度変化が血圧や心拍数の変動を誘発するために、心筋梗塞が生じやすくなるという現象です。特に寒暖差の大きなトイレや浴室への入室、逆に出てきた時に生じやすくなるので、あらかじめ室内を暖めて、居間との寒暖差を減らすことも必要かもしれません。
小諸厚生総合病院 循環器内科医長 疋田 博之先生