アデノウイルス感染症
子どもが保育園に通っていますが、集団感染でしばしば問題になるアデノウイルスが心配です。予防法や治療法なども教えてください。(30代・女性)
アデノウイルスとは
ヒトののどのアデノイド器官から発見されたウイルスであることが「アデノ」という命名に由来するウイルスです。亜属に属し、血清型の違いで種々な感染症を起こす一般に消毒薬が効きにくい病原体で、幼稚園や学校、プールなど集団生活の場、あるいは医療施設内での集団感染がしばしば問題になります。
環境中に比較的安定であり、飛沫感染、手指やタオル、眼科医療器具などを介した接触感染で広まります。ノロウイルスに近似して、アルコール、界面活性剤などの一般消毒剤の効果も低く、次亜塩素酸系消毒剤が必要となります。昔からプールで使われるあの消毒剤です。
感染による様々な症状
種々の感染症の中では、高熱を伴う扁桃炎が多く、結膜炎の合併があれば咽頭結膜熱(プール熱)といわれる流行感染症を生じます。また、症状の強い結膜炎は流行性角結膜炎(はやり目)と呼ばれ、充血・流涙・眼脂・かゆみ・痛みを伴い、極めてつらい症状となります。
ほかに下痢・嘔吐を主症状とする胃腸炎や鮮血尿と頻尿・残尿感を伴う出血性膀胱炎もアデノウイルスが原因となる場合もあります。頻度は少ないのですが重症の肺炎を起こすこともあり、過去においては血清7型の重症肺炎の流行も認められています。
総合的な診断が必要
ウイルスの確定診断は、上気道炎・結膜炎・胃腸炎には3種の迅速診断検査が外来で可能ですが、インフルエンザと同様に感度得意度が完全ではなく総合した診断が必要となります。
また、アデノウイルスに対するワクチンや抗ウイルス薬は存在せず、各感染症に対する対症療法が主となります。アデノウイルス感染症は年間を通じポピュラーな感染症の原因となるウイルスで、終生免疫も形成しないため、大人でも普通に感染を経験する病原体です。(2016.04)
小諸厚生総合病院 小児科部長 小林 真二先生