片付けられない症候群(ADHD/ADD)
以前から部屋や机の片付けが苦手で困っています。片付けたいという気持ちはあるのですが、うまくできません。片付けられないのは病気ですか(30代・女性)
病気ではなく症状の一つ
単に掃除が苦手という人も多いとは思いますが、ADHD/ADDが原因で片付けられない場合があるのをご存じですか。ADHD(注意欠陥多動性障害)とは「集中力」「活動性」「衝動性」「多動性」などを自分でコントロールしにくいことが特徴で、発達障害の一つに位置付けられています。原因としては脳の前頭葉の機能不全ではないかと考えられています。またADHDから多動性を除いたものをADDといいます。「片付けられない症候群」は病名ではなく、ADHD/ADDの症状の一つといえるでしょう。
誰もが心当たりがある症状
主な症状として、遅刻をしやすい、忘れ物が多い、得意なことと苦手なことでは集中力の差が激しい、段取りや効率を考えるのが苦手、目の前のことに気を取られ、全体的な優先順位がつけられない、片付けられない、などがあります。誰もが多少なりとも心当たりのある事柄ですが、診断がつく人とそうでない人で明らかに違うのは「頻度」と「程度」です。お困りの場合は専門医の受診をおすすめします。日常的にこのような症状が現れるので、ADHDが原因で注意されたり怒られることも多く、自分自身でも「だめだなぁ」と落ち込み自信をなくしてしまうこともよくあります。
習慣付け・意識付けが大切
しかし、ADHD/ADDは脳の障害の一つですから、決して人間的にダメなわけでも性格が悪いわけでもありません。ただ、そういった特性を理解し、自分と上手に付き合っていくための方法を身に付けることが大切です。ご質問の「片付けられない」を例にあげると、「とりあえず机に置いてほかのことに興味を持ち集中が移ってしまう」ことがあるとすれば、不要なチラシや郵便物はその都度ゴミ箱に捨てる習慣を付けましょう。整理整頓に対する空間把握が苦手なのと、捨てられないことが原因の場合もあります。置く場所を決める、思い切って捨てることを意識してみましょう。
佐久総合病院 臨床心理科 大島直美主任