大人の発達障害
最近、大人の発達障害という言葉を耳にするのですが、どのようなものなのでしょうか。(30代・男性)
成人期になって特性が現れる
発達障害のある方は、一般的に発達のアンバランスさが乳幼児期からみられますが、その程度が強くない場合、または他の特有の性質(特性)で補われる場合等、何らかの理由で周囲にそのアンバランスさが気付かれないことがあります。このようなケースでは、学童期を経て成人期になったときに初めて社会適応上の困難が分かることがあります。こういった場合を「大人の発達障害」と表現します。
大きく3つの特性に分類される
発達障害は、行動や認知の特性によって「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動症(ADHD)」「限局性学習症(SLD)」の3つに大きく分類されます。これらは重複することもあり、人によっては、複数の特性を併せ持つ場合もあります。また、大人の場合には、子どもの頃に人付き合いが多少苦手で変わっていると思われても、成績が良く、大人しいと気付かれないことがあります。しかし、社会に出ると同僚や上司など複雑な人間関係になったり、興味のない仕事でも行わなければならなくなるなど、徐々に人間関係や仕事に困難さを抱えて初めて気付くといった特徴があります。以前は、親の育て方やしつけが原因といわれていた時期もありますが、そのようなことはありません。詳しい原因については分かっていませんが、脳の神経伝達物質や前頭前野を含む脳の働きの偏りといわれています。
社会生活に及ぼす影響に応じて必要な治療を
大人の発達障害の場合、その人の特性がどの程度社会生活に影響を及ぼし、困難を来しているかということが重要です。生育歴や生活歴、社会適応上の困難さなどを伺い、必要な心理検査などを実施して診断を行います。治療法は、認知行動療法などの心理カウンセリングやSST(Social Skills Training)といった治療教育が行われることがあります。また、人間関係のトラブルによる気持ちの落ち込みなどの場合には、薬物療法を用いることもあります。これまで説明してきた特性が少しでもあるからといってすぐに発達障害ということではなく、個性の範囲内という場合も珍しくはありません。詳しくは専門医にご相談ください。(2018.11)
佐久総合病院 臨床心理科 深澤 桂樹先生