唾液の量
唾液の量は人によって違うのでしょうか。少ないと口臭がきつくなると聞きましたが関係はあるのでしょうか。(40代・男性)
唾液の持つ重要な働き
唾液には、歯の表面や口内に残った食べかすなどを洗い流して味を感じやすくさせる働きや、口腔粘膜を潤して保護する保湿作用があります。
また、唾液中には消化酵素のアミラーゼやリゾチーム、ラクトフェリンなど、細菌発育を抑制する抗菌酵素が含まれています。細菌が産生した酸を中和して歯を守る緩衝作用や、歯の表面のエナメル質を補修する再石灰化作用など、有益な働きがあります。
唾液量が減少すると唾液の持つ働きが低下し、むし歯や歯周病が発生しやすくなります。雑菌が繁殖して口臭が強くなり、消化能力が落ちて胃に負担が掛かります。睡眠中は唾液の分泌がほぼ止まるため、口腔内が乾燥して唾液の作用はさらに低下するといわれます。また、唾液量の減少が味覚、嚥下(えんげ)、構音に障害を来します。
分泌量は年齢により異なる
唾液は、健常な人では1日に約500分泌されますが、年齢によって量が異なります。20代で最も多く、30代以降で減少、70歳を超えると分泌量が半分以下になるといわれています。
また、抗アレルギー薬、降圧薬、利尿剤など、多くの薬剤に唾液を減少させる副作用があります。喫煙、歯列不整、不適合義歯の使用などにより、口腔内に慢性炎症がある状態でも唾液量が低下します。
唾液腺(唾液をつくる組織)腫瘍やリウマチなどの内科的疾患が原因でも口が乾きます。そのほかにドライマウス、糖尿病、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患、腎障害などが唾液量減少の原因として考えられます。
生活習慣を改善し分泌量を増加
唾液量を増やすには、食事中の咀嚼回数を増やす、水分を多めに摂取する、喫煙や飲酒を控える、口腔内を清潔に保つ、ガムを噛んで唾液腺を刺激するなど生活習慣を変えることで、ある程度の改善が期待できます。
変化がない場合、口腔外科専門医を受診することをおすすめします。唾液腺機能検査によって正確な分泌状態を調べることができます。また、マッサージや薬剤により、分泌機能を促進する治療を受けられます。ただし、唾液腺以外の原因によるものは原疾患の治療が必要です。
小諸厚生総合病院歯科・口腔外科 平山 義洋先生