蓄膿症
風邪は治ったのですが、依然として鼻詰まりが治りません。鼻をかむと濁った鼻汁も出るのですが、受診をした方が良いのでしょうか。(20代・男性)
蓄膿症とは
顔面の骨には副鼻腔という空洞が4種類あり、それぞれ、前頭洞(額)、上顎洞(頬)、篩骨洞(目と目の間)、蝶形骨洞(鼻の奥)と呼ばれています。これらの副鼻腔は鼻腔と交通しており、副鼻腔に炎症が起きると、副鼻腔内の膿が鼻汁として排出されます。鼻かぜ(急性副鼻腔炎)のときの濁った鼻汁(白色、褐色、緑色など)がこれにあたります。
通常、膿性鼻漏は1カ月以内に治まりますが、3カ月以上継続した場合は慢性副鼻腔炎といい、一般に蓄膿症と呼ばれています。症状としては、膿性鼻漏のほかに、鼻づまり、嗅覚低下、異臭、後鼻漏、頭痛、頬部痛等が挙げられます。
蓄膿症を引き起こす原因
蓄膿症の原因としては、まず鼻炎が挙げられます。副鼻腔の出口が鼻腔となっているため、鼻腔の炎症が長引くと、その炎症は副鼻腔に及び、鼻腔が腫れることにより、膿の排出が滞り、副鼻腔炎が慢性化してしまいます。
また、上の歯は上顎洞と極めて近いため、歯が原因で蓄膿になることもあります(歯性上顎洞炎)。そのほかには、カビの一種であるアスペルギルスなどの真菌や鼻内の腫瘍、喫煙なども原因になります。
薬で治らなければ手術を
蓄膿症の診断は鼻内所見とCT(またはレントゲン)により行い、原則として3カ月間の抗菌薬等の内服で治療します。内服治療により治癒しなかった場合は、根治には手術が必要と判断されます。手術は1週間入院のうえ、全身麻酔下に鼻の穴から内視鏡を用いて副鼻腔を清掃・開大することが一般的です。
体質が原因で発症する場合も
蓄膿症の中には、難治性・再発性を特徴とする好酸球性副鼻腔炎というものがあり、昨年難病に指定されました。一般的な蓄膿症が感染性であるのに対し、これは好酸球という免疫細胞の異常が原因で発症します。鼻茸(鼻内ポリープ)を生じることが多いため、手術により鼻茸を除去し、また、副鼻腔の出口を大きく広げることによって炎症が遷延化しにくいように形成し、術後の病勢を薬剤で制御します。喘息患者のうち、強い鼻づまりがある場合は、この疾病が強く疑われます。体質が原因であるため根治は難しく、付き合っていかなければならないことが多いとされています。
哺乳類は本来鼻で呼吸する動物です。快適な鼻呼吸を維持して、健康増進に努めましょう。(2016.11)
佐久総合病院 耳鼻咽喉科 清水 雄太先生