補聴器
近頃、「耳が遠くなったのでは」と家族に言われますが、補聴器を使うことを考えた方が良いでしょうか。(80代女性)
装用してからの調整が大切
今回は、補聴器について基本的なことをご紹介いたします。
まず、補聴器装用を開始する時期についてですが、眼鏡と同様に定められた基準はなく、難聴により不自由を感じた時点で装用の適応となります。ただし、眼鏡と異なるのは、補聴器は作製した時点から快適に使える訳ではなく、その後の調整が必要になります。一般に通信販売などで購入することができる集音器は、ただ全ての音を大きくするだけですが、補聴器は聞こえない高さの音のみを大きくしたり、雑音を小さくしたり、一定の方向からだけの音を大きくすることができたりする機能があり、それらの機能について装用感を基に調整していきます。
正しい聴力検査の必要性
また、補聴器装用開始時は脳そのものが聞こえないことに慣れてしまっているため、補聴器を着けるとうるさく感じてしまいます。補聴器を起床時から就寝時まで装用し続けることにより、数カ月間かけて聞こえる脳に回復するため、そうした期間をやり抜く意志が必要となります。
そのような補聴器の特性上、補聴器作製に当たっては正しい聴力検査が欠かせません。また、聴力検査の結果や耳鼻科診察の結果、難聴の原因が単なる加齢ではなく疾患によることが判明することがあります。手術により聴力の改善を得る場合もありますし、補聴器が奏効する公算が小さいと判断して人工内耳など、他の手段を選択する場合もあります。
自分に適したタイプを選ぶ
補聴器には大きく分けて3種類の型があります。基本はオールマイティな耳掛け型が選択されますが、小さくて操作しにくいと感じる場合には、ポケット型という携帯ラジオのような型を選択します。ピーピーと音が鳴るハウリング現象を起こしにくく安価ですが、イヤホンのコードが邪魔になります。また、目立ちにくい耳穴型もありますが、出力が弱いため、大声も聞き取りにくいような高度難聴には適しません。
以上を踏まえ、正しく選択して調整すれば、補聴器は非常に有用な器械ですが、そのような知識がなく高価な補聴器を売りさばく悪徳業者もあるようです。従って、補聴器をご購入の際は、必ず耳鼻科医にご相談ください。(2015.11)
佐久総合病院 耳鼻咽喉科 清水 雄太先生