子どもの肥満
小学1年生になった息子は、標準体重より少し多く(現在30kg)、周りの子と比べて少しぽっちゃりした体型です。今から食事の制限などは必要でしょうか?(30代・女性)
40年前の約4倍に増加
摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回ることにより、過剰なエネルギーが脂肪として身体に蓄積された状態を肥満といいます。食生活の欧米化やテレビゲームの普及などの子どもを取り巻く環境の変化に伴い、小学生の肥満は小学生人口の約8~10%と、40年前の約4倍に増加しています。
肥満の判定
体内の脂肪組織の過剰が肥満症ですが、脂肪組織の重量測定は困難です。小児期は標準体重と比較する肥満度がよく用いられています。乳児期はカウプ指数が使われることもあります。
肥満度=(体重ー標準体重)÷標準体重×100
カウプ指数=体重(kg)÷身長(cm)の2乗×10,000
※肥満度+20%以上、カウプ指数で18以上を肥満と判定します。
肥満のタイプ
肥満には、病的な原因がない単純性肥満と病気が背景にある症候性肥満の2つのタイプがあり、単純性肥満が95%を占めます。単純性肥満の場合、高度肥満では睡眠時無呼吸などの換気障害が現れますが、乳児や軽度肥満では基本的に特別な症状ありません。しかし、10歳を過ぎた頃から脂肪肝や高脂血症、2型糖尿病などの生活習慣病を発症する危険が高まり、その後も肥満が続くと成人の肥満につながり、メタボリックシンドロームのリスクが高くなります。
一方、症候性肥満は原因となる病気によって、低身長や二次性成長の障害、知能低下などさまざまな症状が現れます。肥満の原因となる病気の治療によって肥満が軽快することもあるため、症候性肥満を発見することは重要です。
年齢や身長に合ったカロリー摂取と適度な運動を
肥満度が40%未満の単純性肥満の場合、特別な運動療法や食事療法を行わなくても年齢や身長に合ったカロリー摂取と外で遊ぶことで十分です。カロリーが高い上、ほかの栄養素の乏しい食品や飲み物を減らす必要はありますが、成長を障害する可能性があるため、厳しい食事制限はすすめられません。運動は毎日1時間程度がすすめられています。身長が伸びる年齢なら、体重を減らさなくても増やさないようにすることで、身長が伸びるにしたがって肥満度は低下していきます。両親が肥満の場合、子どもの肥満も改善しにくく、家族全員で生活を見直す必要があります。
肥満度が40%以上の場合は、合併症の検査や食事指導が必要になることもあるので、小児科を受診することをおすすめします。
佐久総合病院 小児科 天笠 俊介先生