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近視と老眼

現在は近視だけですが、年をとってから老眼の症状もでますか?

高校の頃からメガネを掛けており、現在裸眼視力が0.02程度ある。この先老いた時に近視と老眼の両方の症状が出ることがあるのか。これ以上に視力が悪くなってしまうのか。

老化によって視力は低下する
ヒトは、ものを見るときに調節(ピント合わせ)を行っています。遠くの山並みがきれいに見える一方で、近くの新聞が読めるのは、オートフォーカスのカメラのように目が絶えずピント合わせをしているからなのです。ところが、この調節力というのは年齢とともに落ちていきます。ヒトが調節をすると、水晶体(カメラのレンズにあたります)の厚さが変わり、目の中でピントが合うようになります。しかし、老化により水晶体が硬くなると、毛様体筋(ピント合わせに使う筋肉)が働いても水晶体が厚くならず調節力が落ちてしまうのです。この他の原因としては、老化により毛様体筋の作用が減弱するためとも考えられています。
このような状態になると、遠方から近方にすばやくピントを合わせたり、より近くにピントを合わせる事ができなくなります。この症状を老視といいます。調節力は、10歳頃から低下し始め、35歳で5~6D(ジオプター)、45歳で2~4D、50歳以上では1D程度になります。通常の読書距離は眼前25~30cm位ですから、その距離にピントを合わせるのに必要な調節力は3~4Dとなり、老視の症状は通常45歳位から起こることになります。


近視と老眼の関係
さて、今回の相談者が近視のみで、目の病気がないと仮定すると、裸眼視力0.02より、-6D~-7D程度の近視があると推測できます。これを言い換えると、メガネを掛けていないときは、目から15cm離れたところが一番見える目ということができます。
『老眼=近くが見にくい目』と考えると、近くは見えていますから、この人は老視が出ないように感じるかもしれません。ところが、お話したように老視は年を取るにつれて、誰にも必ずおこるのです。
では、どんなときに相談者が老視を感じるのでしょうか。それは遠用のメガネをかけてごく近くを見るときです。メガネを掛けているときは、正視(遠くにピントのあっている目)の方とほぼ同じになり、年齢相応の調節力の分しか近くにピントを合わせることができないからです。(正確には、メガネの作用により近見に必要な調節力は正視の方に比べて少ないので老視の感じ始めは差があります。)そして今後は、遠くを見るためのメガネと近くを見るためのメガネ両方が必要になるでしょう。


症状にあったメガネの着用を
近視や老眼があるからといってこれ以上視力が悪くなる、つまり合うメガネを掛けても視力が1.0でない、そういったことは目や脳の病気が起きない限りありません。しかし、調節力は年を取るごとに低下し、老視は進むのでその時々にあったメガネを使用することが必要になります。                                         
※D(ジオプター)=屈折力の単位


佐久総合病院 眼科部長 三浦 文英先生

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