空腹時の胃痛
昼食前や夕食前の空腹時に胃がキリキリ痛みます。食事を取ると痛みは和らぐのですが、なぜでしょうか。
必ずしも胃の病気ではない
一般的におへその上、いわゆるみぞおちを心窩部と呼びます。ここの痛みを心窩部痛と言います。これをよく皆さんは胃が痛いとおっしゃいますが、必ずしも胃の病気によって起きるわけではありません。食道や上腹部臓器と呼ばれる肝臓、胆嚢、膵臓、十二指腸の病気でもよく起きることが知られています。また、これ以外でも、下腹部臓器や肺、心臓の病気でも心窩部痛が起きることがあります。
今回のご質問では、食事によって痛みの度合いが変化するようですので食事と関係した臓器すなわち消化器の病気が考えられ、心臓や肺はあまり関係は無さそうです。食事によって痛みが変化する病気として知られているものでは、胆嚢、膵、胃、十二指腸の病気が挙げられます。この中で胆嚢や膵臓の病気は脂っこいものを食べたり、アルコールを多く取ることで痛みが強くなることが多く、空腹時に痛みが強いのは急性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍が考えられます。
胃は酸性の強い胃液や消化酵素を出して食物を消化する働きがあります。空腹時は胃の中になにも無いので胃液が直接病変部を刺激して症状が強くなり、食事をすることにより胃液が薄まって症状が軽くなると考えられます。
基本的には薬で治る
胃液の成分は主に塩酸とペプシンと呼ばれる酵素で、タンパク質の消化に携わります。通常、胃や十二指腸は特殊な粘液を出して自分自身を溶かされないように防御しています。何らかの原因でこの防御機能が低下したり、胃液の分泌が著しく多くなったりすると胃や十二指腸の粘膜が傷害を受け溶けてしまう病気が胃潰瘍や十二指腸潰瘍です。
急性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍はストレスやある種の薬剤で引き起こされます。また、最近ではヘリコバクターピロリ菌と呼ばれる細菌が原因であることも知られるようになりました。
ご家庭で注意することとして、タバコやアルコール、ストレス、暴飲暴食はできるだけ避けるようにし、消化の良いものを規則正しく食べるようにすることをお勧めします。基本的には、急性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍はいずれも薬で治る病気です。症状が長く続いたり、早く治したい場合には医療機関で薬をもらうと良いでしょう。ただし、症状が無くなったからと言って勝手に薬を止めてしまうとすぐに再発することがありますので、医師の指示に従うようにしてください。
また、何回も胃潰瘍や十二指腸潰瘍を繰り返す方がいらっしゃいます。この場合、ヘリコバクターピロリ菌を退治することにより再発する可能性を低下させることができます。これを除菌療法と呼びます。一週間ほど抗生剤と抗潰瘍剤を飲みます。長く潰瘍でお困りの方はかかりつけの先生にご相談されると良いでしょう。
悩まずに検査を
これらの病気の診断としては上部消化管内視鏡検査いわゆる胃カメラが非常に有効ですが、この検査が嫌でなかなか病院に足を運ばない方も多くいらっしゃるかと思います。あまり我慢をしていると、食事が出来なくなって入院治療をしなくてはならなくなります。以前に比べ胃カメラも細くなり飲みやすくなっていますので、悩まれずに検査を受けてみてはいかがでしょうか。また、これらの病気が重症化すると出血が止まらなくなったり、穿孔と言って胃や十二指腸に穴があいてしまい命に関わることもあります。痛みが強くなったり、便の色が黒くなるようならすぐにお近くの医療機関を受診してください。
小諸厚生総合病院 橋本晋一先生(外科胃腸科医長)