肝機能障害
先日、会社の健康相談で「肝機能障害」と診断された。自覚症状は特にないが不安。どのような病気なのか。また、どうすれば治るのか。
肝機能障害
毎年大勢の方が、各種の健康診断で「肝機能障害」:C要経過観察、D要精密検査という報告を受け取っています。
「肝機能障害」という言葉は正確な表現ではないのですが、慣用術語として使われています。肝臓の「機能」すなわち「能力」が「障害」されている(低下した)状態も含んではいますが、たいていの場合、肝臓の中の細胞が壊れていたり、細胞膜に異常が生じたりして、細胞内の酵素が外に出て血液中に増えている状態を指しています。肝細胞内酵素であるAST(GOT)、ALT(GPT)が増えているときは、肝細胞が壊れ続けていたり(慢性肝炎)、肝細胞膜が弱っている状態(脂肪肝など)を疑います。
「慢性肝炎」と「脂肪肝」
「慢性肝炎」は、ウイルス(B型、C型など)が肝細胞内に居続けて、白血球の一種のリンパ球が肝細胞を破壊してウイルスを処理し続けている状態であり、持続すると肝臓内に線維が増えて硬くなり(肝硬変)、肝臓の機能が命を維持するのに必要な水準以下になったり(肝不全)、肝細胞ガンが発生したりします。
「脂肪肝」とは、アルコールを長年飲み過ぎたり(γGTPも上がります)、肥満状態であったりすると、肝細胞内の働きが異常となり、肝細胞内に中性脂肪が溜まってくる状態です。ASTやALTがあまり多くなければ悪化しませんが、多いと肝細胞がたくさん壊れていることになり肝硬変になることがあります。
節酒が大切
γGTPのみが多いのは、アルコールを分解する肝細胞の能力以上に大量に飲酒し続けている場合です。そのままだと、肝細胞が壊れ始めます(ASTとALTが多くなります)ので、節酒することが大切です。ALTが多い場合は、肝細胞で作られた胆汁が流れ落ちる管(細胆管)をつくる細胞から漏れてきたものです。胆汁の流れが悪くなっている可能性があり、腹部超音波検査などの精密検査を受ける必要があります。ZTTが多いのは、リンパ球がつくる特殊なタンパク質(免疫グロブリン)が多いことがあり、精密検査が必要です。 いずれにしろ、要精密検査の指示があった場合は、ぜひ受けて説明をしてもらいましょう。
小諸厚生総合病院 西村誠先生(内科)