誤嚥
最近、夫が食事で物を飲み込むときにむせてしまうことがあります。その原因と対処法があれば教えてください。(70代・女性)
様々な原因で起こる誤嚥
異常がないときは、食べ物を食べたり飲み物を飲むこと(嚥下)に関してあまり意識しませんが、口、のど、消化管などの食べ物や飲み物の通り道がスムーズに働くことで、安全に嚥下ができています。しかし、これらがうまく動かないと、胃に入るべき食物が間違って肺に入ってしまうことがあり、これを「誤嚥」といいます。このような事態は、人間の咽頭(のど)は食べ物が通る道と空気が通る道が交差した構造になっているために生じます(動物では生じません)。
誤嚥の原因としては、脳卒中、認知症、口腔や食道など食物の通り道のがんなどの病気があります。ほかに、嚥下にはたくさんの筋肉が関与しているため、加齢による筋力低下も影響します。また、嚥下機能だけでなく、食事を食べる方法や姿勢などの食環境が不適切であることも影響します。
異変を見逃さず早めに対応を
誤嚥した場合、間違って肺に入ってしまった食物を外に出そうとする正常な体の働きとして、咳やむせがみられるのが一般的です。しかし、体力や筋力が低下している方は、これらの症状がはっきりしないことがあります(不顕性誤嚥)。誤嚥してしまったときに一番怖いのは、誤嚥性肺炎です。症状としては、発熱、咳、痰が増える等があります。だだし、高齢の方はこのような特徴的な症状がみられないことがあり、食欲がない、何となく活気がない、体重が減ってきたなどで発見されることがあります。日々の生活の中で、誤嚥性肺炎を疑う症状のほかに「いつもとちょっと違う」ということを見逃さずに早めに対応することが重要です。
口やのどを意識的に動かす
嚥下機能を維持し、誤嚥を予防するには、口やのどなどの嚥下に必要な部分を意識的に動かすことが大切で、日常的には、歌を歌う、友達とのおしゃべりで口を動かすのも方法の一つです。そのほかに、全身の体力や筋力を意識的に鍛えることも間接的に嚥下機能を良くします。また、食べるときに口にたくさん詰め込まない、一口ずつよく咬んでゆっくり食べるなど、食べ方に注意することも大切です。(2018.10)
佐久総合病院 摂食嚥下障害看護認定看護師 上野 静香