肺気腫
先日、職場の仲間が健康診断を受け、レントゲンを見た医師から肺気腫の前兆が診られると告げられ、禁煙を促されたと聞きました。私も若い頃からタバコを吸っているので心配です。 (50代・男性)
肺気腫の原因と症状
肺気腫とは、タバコ煙などの有害物質を長期的に吸入することで生じる肺の変化であり、体に酸素を取り込む肺胞と呼ばれる細胞が破壊されて、肺が異常に広がっている状況です。一般的には進行性の病気であり、近年、肺気腫などを有し、呼吸機能が低下した病気は慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれ、2010年の統計では死亡原因の第9位になるなど、注目されている病気です。
初期症状は、一般的に長く続く咳、痰および労作時の呼吸困難感(息切れ)を認めることが多いといわれています。息切れはゆっくり進むため、あまり動かなくなることで、症状が分かりにくくなり、年のせいと考えている方もいらっしゃいます。
原因は基本的にタバコ煙によると考えられています。現在、禁煙されている方も過去にタバコを吸われていた方は症状が出現する可能性があります。また、受動喫煙および大気汚染も重要な要因と考えられています。
検査や治療の必要性
上記のような症状がある方で、呼吸機能検査、胸のレントゲンおよび動脈血液ガス検査などで診断することが可能となります。
肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患は、咳や痰の増加、労作時の呼吸困難感のみならず、肺癌などの肺の病気を合併することがあります。また、心筋梗塞や心不全など心臓の病気、骨粗しょう症、栄養障害およびうつ病などの全身的な影響を引き起こすことが知られています。
対策としては、まずは禁煙することが重要です。また、かぜや肺炎などで症状が急激に悪くなる状態(急性増悪)を来すこともあることから、肺炎やインフルエンザ予防のためにワクチン接種も重要となります。
治療は、薬物療法とリハビリテーションが中心となります。薬物療法は気管を広げる吸入薬が基本となります。場合によっては、吸入ステロイド薬や去痰薬などの使用も行っていきます。さらに、呼吸リハビリテーションにより、日常の症状を緩和することができるといわれています。症状が進んでしまった方には、在宅酸素療法を併用することもあります。
慢性閉塞性肺疾患は、呼吸困難感により日常の活動が制限され、日々の生活の質を大きく下げてしまうことが一番の問題となります。症状を有している方は、かかりつけ医に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
佐久総合病院 総合診療科 和佐本 諭先生