高齢者の自動車運転
最近自動車を運転するとハッとしてしまう事があります。何か大きなミスをおこす前に返上しようと思っております。どのような点に気をつけていたらよろしいでしょうか。(70代女性)
わが国では、75歳以上の人の3割以上が運転免許証を保有し、特に農業従事者では、自家用車やトラクターなどの運転をする高齢者も多いと思われます。しかし、自動車運転に必要な能力は加齢により変化します。運転の技能は個人差が大きく、また、加齢による変化にも個人差があります。さらに、加齢による変化は通常は徐々に出現するため、本人は自覚しにくいことがあります。
自動車は、便利な乗り物ですが、使い方によっては人の命を奪う「走る凶器」にもなります。ですから、運転の可否の判断を本人の希望だけに任せるのは心配されます。運転は、目的地までの経路を考え、周囲の様子を目や耳からの情報で察知し、さまざまな判断をします。走行中は前方を見ながら、バックミラーで後方の状況を確認、同時に速度などの計器類を見ます。状況に合わせアクセルやブレーキを踏みながらハンドル操作をします。こうした運転に必要な瞬時の判断と複合的な動作が、高齢者は苦手です。視力低下や視野の狭窄(きょうさく)、聴力低下、記憶力低下、判断力の低下、筋力低下、四肢の感覚が鈍くなるなど、さまざまな能力が加齢によって低下します。高齢になると心臓病、高血圧や血糖値異常などの病気を有する人も増えます。そのため、頭がボーっとする、目まいがする、イライラする、眠くなるなどが運転中に出現すれば、交通違反や事故の危険も増すわけです。
高齢者の運転は、悪天候の日や体調不良の日は避け、慣れた道だけを走り、車選びも格好良さより、運転しやすさと安全性で選んでください。そして、運転時に危険を感じるようになったり、同乗した家族や仲間から「運転は危ない」と忠告されたら、早めに運転免許を返上する勇気も大切です。
健康科学アドバイザー●福田千晶