はしか
成人も発症患者が増えていると聞きます。初期症状が風邪と似ているそうですが、見分け方はあるのでしょうか? 子どものころにワクチンを接種しましたが、まだ有効なのでしょうか? (30代・女性)
はしか(麻疹)とは
麻疹は麻疹ウイルスの感染で発病する感染力の非常に強い病気です。過去には毎年流行し重篤な症状を併発。主に子どもが発症し「命さだめ」の子どもの病気といわれていたようです。1度かかると終生免疫ができ、2度目の発症はありません。免疫がないと、乳児から高齢者まで麻疹に感染するおそれがあります。
感染すると11日程後に発熱や強い咳などの症状が現れ、初期は風邪と似ているところがあります。さらに、発病4日目ころから発疹が全身に広がり39・5℃以上の高熱が3〜5日間続きます。体力の消耗が激しく衰弱し、重い肺炎や腸炎、中耳炎などの合併率も高く、まれに重篤な脳炎をおこすおそれがあります。乳幼児(母からの移行免疫が無くなる6〜8カ月以後)や成人がかかると重症化します。麻疹には有効な薬がなく、対症治療で凌ぐのみです。
麻疹予防はワクチンで
日本では1978年から定期接種が始まり、接種した約95%以上の幼児学童が免疫を獲得し流行は激減しました。しかし免疫は徐々に低下し、10年以上経つと残存免疫の程度で、非典型的な軽症麻疹や通常の麻疹にかかる可能性が出てきます。軽症麻疹は風疹(注1)や他の病気と診断されやすく、ウイルスを飛散させ成人麻疹増加の原因になっています。
06年から、以下の理由で1歳からの1年間と小学校就学前の1年間に2回接種することになりました。
①1回接種では免疫ができなかった子に免疫をつける。
②未接種の子に接種してもらう。
③1回接種でついた免疫を増強させる。
また、08年から青少年の免疫を高めるため、5年間の暫定で中高校生に2回目の接種がされました。しかし、22歳以上の方は接種歴1回以下が大半です。成人にも未発症の方には2回接種が推奨されています。現在、日本では麻疹風疹混合ワクチンが主に用いられ、定期接種の適応年齢以外は任意接種となり有料です。成人になっても、子どものころの予防接種歴や麻疹風疹罹患歴が記録された母子手帳を無くさないことが大切です。
(注1)風疹は「三日はしか」ともいわれ軽症麻疹に似るが、麻疹とは全く違う病気です。昨年から大都市圏で成人風疹が急激に流行しています。
小諸厚生総合病院 小児科医長 阿部 好正先生