火傷痕
小さいときの火傷の痕が、ふくらはぎに残っている。スカートをはくと人目につくので、きれいに治したいと考えているが、どのような治療があるか。
浅い火傷の場合
まず、比較的浅い火傷が治った場合ですが、デコボコしたような傷跡(瘢痕)がなく、表面に褐色の色素(シミ)だけが残っているようなものに用いる治療法があります。
ご質問にある火傷の痕とは、もしかしたらこういうタイプものではないでしょうか。この場合は、高速で回転するグラインダーで瘢痕上皮を薄く削り取る皮膚剥削術か、レーザーで治療します。剥削術では上皮の欠損創が、レーザー照射では軽い熱傷創が生じます。いずれも施術後は創の再上皮化をはかるために軟膏や創傷被覆材などで2週間ほど治療します。
皮膚剥削術でも、レーザー治療でも、再上皮化した直後は局面がきれいなピンク色を呈していますが、通常治療後1ヶ月ほどしてから褐色調の炎症性色素沈着が生じてくることが多く、これは数ヶ月持続します。はじめはかなり濃い色素沈着が出たり、水玉模様のシミが出たりするのですが、これらの治療を繰り返し行うことで、しだいに出てくる色が薄くなっていきます。しかしながら、これらの方法を駆使しても完璧に消すことが難しいのがこの傷跡の特徴です。
治療は2~3ヶ月に1回のペースで、1年間ぐらいかけて行います。尚、レーザーでは、照射前に麻酔薬のクリームを塗るか、麻酔テープを貼ることで痛みを軽減することができます。剥削術では局所麻酔の注射が必要です。
深い火傷の場合
次に、深いやけどを負って治った場合です。この場合、局面は硬いでこぼこした瘢痕になっています。小さなものであれば、紡錘状に切除します。比較的大きなものでは、何回かに分けて切除するか、組織拡張器を皮下に埋め込んで正常皮膚を十分伸展させたところで瘢痕を切除します。
他に、真皮重ねばり植皮法があります。これは、幅広い瘢痕表面をもつものに適用します。瘢痕の表面を薄く平らに削り取った後、傷跡が目立たない大腿部などからきわめて薄い皮膚を採取して移植します。比較的カラーマッチがよく、皮膚の「きめ」も再現されます。いずれの方法でも、縫合部には線状の瘢痕が残ります。
これらの治療法では、完了するまでには数ヶ月から数年間かかるものまであります。主治医から治療の内容、起こり得る合併症、治療の効果と限界等をよく聞いて、あせらず根気よく治してゆくことが大切です。
佐久総合病院 形成外科部長 大谷津 恭之先生