胃食道逆流症
最近、みぞおちからのどもとにかけて胸やけのような不快感があり、夜中や明け方近くになると、胸に痛みも感じます。何が原因でしょうか、教えてください。(50代・男性)
胃内の酸が逆流することで起こる病態
胸やけを起こす疾患はいろいろありますが、食生活の欧米化にともない、最近日本人に増えているといわれる病気に胃食道逆流症があります。
胃食道逆流症は、胃内の酸が逆流することで起こる病態をいいます。食道と胃の間には、胃内の物が逆流しない機構(下部食道括約筋)があります。加齢をはじめ、筋肉の低下や過食、高脂肪食による胃内圧の上昇、締め付けによる腹圧の上昇などの要因によって逆流防止機構が低下。胃内の酸が逆流することにより食道に炎症(逆流性食道炎)を起こします。
酸の逆流によりさまざまな症状が引き起こされますが、定型的症状の代表は胸やけです。具体的には心窩部(しんかぶ)から前胸部にかけてのやけつく感じのほか、酸っぱいものが上がる、食べるとつかえるなどがあります。また、胸痛、ぜいめい、慢性的な咳、咽頭の違和感など、食道の症状とは違う症状も引き起こすことがあります。
食道ガンや胃ガンが潜んでいる場合も
診断は食道・胃内視鏡検査を行い、胃酸の逆流による食道の炎症所見をみます。検査の結果、時に食道に炎症所見がないこともあります。その場合は、より専門的な検査を必要とすることもあります。
治療は、薬物療法と手術療法があり、主に薬物療法を用いますが、胃食道逆流症は再発しやすいので長期の薬物治療が必要になることがあります。
日常生活では、食事に関しては脂っこいものや甘いもの、刺激の強いものを控えることです。また、食べ過ぎや食べてすぐ横にならない、お酒やタバコを控えることも大切です。ほかには、前かがみにならない、お腹を締めつけない、便秘、寝るときは上体を高くするなどの注意も必要です。
胸やけを起こす病気は胃食道逆流症以外にもいろいろあり、食道ガンや胃ガンが潜んでいることもあります。まずは医療機関を受診し、食道・胃内視鏡検査を受けることをおすすめします。
小諸厚生総合病院外科部長 小松 信男先生