ピロリ菌
胃潰瘍を繰り返していたところ、知人にピロリ菌の検査をすすめられました。ピロリ菌とはどんな菌なのでしょうか。胃潰瘍との関係についても教えてください。(40代・男性)
胃の粘膜から発見
ピロリ菌は正式名を「ヘリコバクター・ピロリ」と呼び、1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルの2人の博士によって胃の粘膜から発見されました。
当時は強い胃酸の中に細菌は生息できないと考えられていましたが、マーシャルは自分で培養した菌を飲んだところ、1週間後に吐き気と胃のムカムカを自覚して胃炎となり、胃の中からピロリ菌が出てきたという経緯があります。
その後、ピロリ菌が胃炎や胃・十二指腸潰瘍の発生と深い関係にあること、抗生物質で潰瘍の再発を予防できることが分かり、2人の博士には2005年のノーベル医学・生理学賞が授与されました。
胃潰瘍との関係
胃潰瘍と十二指腸潰瘍については、ピロリ菌感染の密接な関与が考えられていて、ピロリ菌の見つからない胃潰瘍はむしろ少数です。ピロリ菌の除菌には、複数の薬を1週間内服して除菌をすることで約80%の潰瘍の再発予防につながることが分かっています。また、胃癌との関係についても強く疑われていて、現在研究がすすんでいます。
ピロリ菌検査方法
様々な検査方法がありますが、大きく分けて内視鏡を使う検査と使わない検査があります。
内視鏡を使う検査には、ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素を薬に反応させて調べる「迅速ウレアーゼ試験」、胃から取った検体を顕微鏡で覗いて直接確認する「鏡検法」、検体の細菌を培養してピロリ菌を調べる「培養法」があります。
内視鏡を使わない検査には、血液を用いた「抗体検査」、特殊な薬を飲んだ後に吐いた息を調べる「尿素呼気試験」などがあります。
日常生活での注意点
ピロリ菌の主な感染経路は水や食べ物など口を介しての感染で、衛生環境、特に上下水道の普及が感染率を左右しています。最近の報告では日本人の20歳代で約20%、60歳代で約80%が感染していると推定されています。しかし感染しているからといって必ずしも胃潰瘍になるわけではありません。
また、胃潰瘍の予防にはタバコや飲酒、ストレスも避けたほうがいいようなので、日常生活で気をつけるといいでしょう。
佐久総合病院 伊藤 大介先生