ロコモティブシンドローム
最近よく耳にする「ロコモティブシンドローム」の意味を教えてください。また介護とどんな関係があるのか教えてください。(70代・女性)
ロコモティブシンドロームとは日本整形外科学会が2007年に提唱した運動器(骨、関節、筋肉など、体を支え、動かす役割をする器官)の障害により、要介護になる可能性が高い状態になることです。要介護の原因として、骨折・転倒、関節疾患が20%を占めており、運動器の障害を予防することが大事だといわれています。
主な症状と二つの原因
具体的な症状としては、「階段を昇るのに手すりが必要」「支えなしには椅子から立ち上がれない」「15分くらい続けて歩けない」「片足立ちで靴下がはけない」「家の中でつまずいたり、滑ったりする」などが含まれます。そのうち一つでも含まれていればロコモティブシンドロームの可能性があります。
原因については大きく分けて二つあります。一つ目は運動器自体の病気や怪我です。病気としては変形性関節症、骨粗鬆症による骨折、脊柱管狭窄症、関節リウマチなどが挙げられます。
二つ目は加齢による運動器の機能低下です。加齢による筋力・持久力の低下、反応の遅れ、運動速度・バランス機能の低下などが起きてしまいます。
日々の運動と食事が大切
この加齢による問題は予防することができます。その方法としては、やはり日々の運動と食事です。運動については例えば、ウォーキング、いつもよりも歩幅を広くして早く歩く、水泳、家事の合間やテレビを見ながらのストレッチ、地域のスポーツイベントへの参加、マレットゴルフ、ラジオ体操などが挙げられます。今までよりも10分でも多く身体を動かすことがロコモティブシンドロームの予防につながります。
栄養については、五大栄養素(炭水化物・脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル)を1日3回の食事からバランスよく摂ることが大切です。日々の少しずつの努力が、要介護になる可能性の低下につながるのです。
運動器を良い状態に保つ
最後に、ロコモティブシンドロームという言葉には「人間は運動器に支えられて生きている。健康に生きるためには運動器を良い状態に保つことが重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージが込められています。皆様もこの機会にロコモティブシンドロームを意識し、思い当たるようであれば医療機関を受診してください。(2016.09)
佐久総合病院 佐久医療センター 整形外科 橋本 泉智先生