マダニ
野山や草むらなどに出かけるときはマダニに注意とよく耳にします。友人とトレッキングに行く予定ですが、マダニの対策などを教えてください。(20代・女性)
マダニとは
大きさは3〜8mm程で、野生動物から吸血しています。草むらの葉っぱの裏などに潜み、たまたまヒトが接触すると草から飛び移って吸血します。数日間の吸血の後、飽血すると膨らんで脱落します。マダニに刺されても痒みはほとんどないため、刺されていることに気付かないときも多いです。
春から秋の農林作業等で刺されることが多いですが、最近では公園や河川敷、民家の裏庭など身近な場所での存在が問題視されており、犬やネコから吸血している場合もあります。マダニはただ吸血するのみでなく、ウイルス等による感染症を媒介することがあります。
「ライム病」と「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」
「ライム病」はマダニに刺されてから1〜2週間後に刺された部位の発赤が周辺に広がり、10㎝以上になります。発熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛もみられることがあります。ペニシリン等の抗生物質で加療します。放置すると、発赤が全身に多発したり、不整脈や顔面神経麻痺、慢性関節炎などをきたします。
「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は、マダニに刺されてから1〜2週間後に、38度以上の発熱、嘔吐、下痢等をきたし、重症化すると死亡します。致死率は約30%です。有効な治療薬はなく、対症療法が主体です。2013〜16年の患者数は170人で西日本が中心ですが、日本全国でこの「SFTSウイルス」を持ったマダニが確認されており、その他の地域でも注意が必要です。
予防法と注意点
山林に入る場合は、長袖や長ズボン、手袋等で、できるだけ肌を露出しないようにします。上着の裾はズボンや手袋の中に、ズボンの裾はハイソックスの中に入れて、マダニの衣類内への侵入を防ぎます。
「ディート」が主成分の虫よけスプレーはマダニにも効果があるため、衣類で防備した上に併用すると良いでしょう。ただし、子どもへの使用には注意が必要ですので、注意事項を読んで使用してください。
吸血中のマダニはギザギザの歯をくいこませています。無理に取ると口が残ったり、体内の病原体を逆流させてしまう恐れがあります。強く咬着している時は無理に引き抜かず、皮膚を含めて虫体を切除するのが良いので、皮膚科を受診してください。ウイルス等を持つマダニは数%で、刺されても必ず感染する訳ではありません。刺されたら数週間は体調の変化に注意し、発熱等の症状が出たときは医療機関を受診してください。(2016.07)
小諸厚生総合病院 皮膚科 吉澤 さえ子先生