歯周病
最近、歯磨きをすると歯茎から出血することが多くなりました。また家族に口臭がきついといわれます。こまめに歯磨きをしているのですが、何が原因でしょうか。(40代・男性)
口腔の2大疾患
歯茎(歯肉)からの出血や口臭の原因は第一に歯周病が考えられます。歯周病は歯肉炎と歯周炎に分けられます。歯肉炎は歯肉に炎症があるもので、歯周炎は歯肉の炎症とともに歯を支える歯槽骨の吸収を伴っている状態です。
歯の表面に付いた細菌(歯垢)がつくり出すさまざまな物質で歯肉に炎症が起こります。歯肉に炎症が起こると、歯と歯肉の間に隙間が生じて歯垢が入り込み、隙間がさらに拡大します。隙間の拡大は歯周ポケットと呼ばれる深い溝を形成し、悪化すると歯の根の周りの歯槽骨をすべて吸収してしまうほどになります。歯垢は石灰化すると歯石になり、歯周ポケットを深くさせます。
歯周病の進行とともに歯肉の出血や歯肉の腫れ、口臭、排膿、歯の動揺などを来しますが、かなり進行するまで自覚症状の無いことが多いです。
多くの因子が考えられる
関連のある因子として全身的には免役能や遺伝的因子、年齢、人種が関連し、糖尿病のような全身疾患も関与します。局所的には不良な咬み合わせや歯並び、歯ぎしりなどの不良習癖、口呼吸など、環境因子としては薬の副作用や喫煙、ストレスなどがあります。
40歳以上の人が歯を失う原因の80%以上が歯周病によるとされ、1996年に生活習慣病に認定されました。
予防や治療は健康維持につながる
歯周病の原因は細菌であり感染症のため、高齢者に限らず若い人もかかります。ブラッシングや歯石除去が予防や治療に有効かつ不可欠です。軽度のものは日常的な口腔清掃管理と治療により完治が得られます。中等度以上に進行すると外科的処置による歯周ポケット内の細菌の除去が必要となり、歯が垂直的に動揺する状態に至っては抜歯の適応となります。
歯周病菌は心臓病、動脈硬化、肺炎、早産、腎臓疾患などの原因にもなります。全身の疾患と非常に関連が深く、全身の健康維持のためにも予防、治療が重要です。
佐久総合病院 歯科口腔外科部長 松島 凜太郎先生