認知症の予防
知人の親が最近になって認知症と診断されたと聞きました。将来は私や両親も認知症になるのではないかと心配です。何か予防法はありますか。(40代・女性)
認知症の原因には、脳血管型とアルツハイマー型の2つがあります。前者は高血圧や糖尿病などで脳の血管が障害されて、脳の神経細胞が広範囲に障害されるタイプです。後者は原因がよく分かっていませんが、脳の神経細胞が障害され、脳が萎縮するタイプです。これらを予防するには、40代から対策を始めておかなくてはなりません。
脳血管型では、高血圧や糖尿病をしっかり治しておくことです。アルツハイマー型では、脳を鍛えることで、ある程度は予防できることが分かってきました。
東京都健康長寿医療センターでは、認知症予防に役立つ方法をいろいろ研究していますが、低下しやすい認知機能の主な3つの機能、すなわち「エピソード記憶」「注意分割機能」「計画力」について、重点的に鍛える方法を勧めています。
エピソード記憶というのは、比較的最近の出来事や実際に体験したことを覚えていて、その記憶をきちんと思い出すことができるという機能です。この機能を鍛えるには、例えば、昨日の昼食に何を食べたかをはっきり思い出す訓練をするとか、日記を付ける場合、今日の日記ではなく1日前や2日前の日記を書いてみることです。
注意分割機能は、2つや3つの作業を同時進行しながら、うまく実行できる機能です。たまった新聞や手紙などを手際よくまとめたり仕分けしたりする行動や、2つ以上の料理を同時につくる作業が有効です。
計画力を鍛えるには、例えば複数の店で食品や日用品などの買い物をするときに、どのように移動したら効率的なルートになるか考えてみることです。また、旅行のプランを立てたり、囲碁や将棋、マージャンなどで様々な作戦を考えるのも計画力の鍛錬に役立ちます。
佐久総合病院名誉院長 松島 松翠